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次は司法書士とるぞ! おかげさまで行政書士試験は突破できました2020!交通安全アドバイザーのhigashiです。

Metal Intersections-5 Stratovarius / Elysium

 

1. ダーケスト・アワーズ

2. アンダー・フレーミング・スカイズ

3. インファーナル・メイズ

4. フェアネス・ジャスティファイド

5. ザ・ゲーム・ネヴァー・エンズ

6. ライフタイム・イン・ア・モメント

7. ムーヴ・ザ・マウンテン

8. イヴェント・ホライズン

9. エリジウム

10. キャスタウェイ

11. ダーケスト・アワーズ〔デモ〕

12. アゲインスト・ザ・ウィンド〔ライヴ〕

13. ブラック・ダイアモンド〔ライヴ〕

(10~13は日本盤ボーナストラック)

 

バンドとは何か、どうあるべきか、何が正しいのかを考えさせられる、Stratovariusはそんなバンドの一つだ。プロ意識の在り方としてはリスナーに自分たちの楽曲を提供し対価をもらうのが本筋だ。その本筋の中では手厳しいファンの洗礼を浴びることもあれば評論家による酷評にさらされることもあろう。自らがリーダーとしてソングライティングを務め、自他ともに認めるバンドの顔であったはずがいつしかそのバンドから自身が放逐されてしまうような悲劇もまた、或いはその「本筋」の流れの中で行われることと言えるのかもしれない。つまりはファンの求めるバンド像とメンバー自身のそれの乖離であったり、意識の差、時代の流れ……要因はさまざまあろうが、とにかく個人としてはStratovariusはティモ・トルキの「呪縛」(敢えてこう書こう)から解き放たれることによってより優れたバンドへと成長することに成功した好例であると言えよう。メンタル的、フィジカル的問わず体調の悪化を表出させて以降のトルキの作曲はいかにも退屈で、それはそのままStratovariusの音楽を平坦なものにしてしまっていた。様式美という観点からのみ見ればそれもまた誤りではないのかもしれないが、しかしファンの多くは貪欲なものだ。その中でより一歩広がった世界を求める。その結果としてバンドがより新たな形へと再構成されるのは決して不自然なことではない。

 

構成メンバー全員がバンドの音楽により能動的に関わるようになって二作目、本作は優れた一枚として世に出され、高い評価を得るに至った一枚である。

 

 

全体のサウンドは煌びやかであり、各パートの音を積極的に生かす構成になっている。ティモ・コティペルトの歌唱は中~高音を広く使っている。トルキ作曲時代ほど無理な高音は新曲において使用しなくなっているようでその点も好感。現在のライブにおいてもFather Time等実演するようだが、なかなか仕上がりとしては厳しいようで、「コティペルトの高音は聞き苦しい」とまでは言わないまでも、よりヴォーカリストの特性を生かせる方向は明らかである以上、適切な選択と言えるだろう。メタルだからと言って声を嗄らして叫ばなければならない、ということは決してないのだ。

 

起伏に富む展開を見せるアルバムで一番の聴きどころはやはり18分にも及ぶ超大作「Elysium」であろう。ドラマティックで少々大仰とも言える展開と丁寧で高クォリティのプレイング、特にテクニカルなだけでなくエモーショナルでもあるクピアイネンのギター、随所で細かなフレージングを丁寧に紡ぐポラーのベースには注目したい。それに対して完璧な親和性を見せるコティペルトのヴォーカル。一曲の大作の中にさまざまな表情が現れては消える本作はこの手の「長い曲」のお手本のようだ。パートのソロに頼り過ぎていないのもまた良し。幾度も転調し姿を見せるメインテーマフレーズはあまりにも美しく雄大で、感涙すら覚える仕上がりの名曲、その表題の示す通り「理想郷」、余すところなく聴きこみたい。

 

他曲にも目を向ける。全体を通して捨て曲なしのアルバムであり、どの楽曲にも貫かれているStratovariusらしさ(それは無論、トルキ離脱後の新生Stratovariusということになる)はファンの期待に的確にこたえると同時に新規リスナーをしっかりと誘因することが出来る仕上がりであると言えるだろう。ややプログレッシブであるという評も見るがそれほど強調すべき項目では無いと見る。プログレメタル的な要素の流入を認めるが決してそれが主要なものとしては成立していないからだ。冒頭一曲目、Darkest Hoursはシンプルなロックナンバーの典型的展開、その中にStratovariusuの音が凝縮されており一曲目として実に相応しい。日本のロックバンドを好きでよく聴く、というリスナーにも受け入れられやすい曲だろう。続くUnder flaming skies、Infernal   mazeはいずれも疾走感が気持ちのよい楽曲で、特に後者はキャッチーなコーラスパートが強い力を持っていてライブでも楽しく拳を突き上げることが出来そうだ。現状のコティペルトの歌唱では多分このあたりの高さが気持ちよく聴くことの出来るギリギリの到達点だろう。

 

#7Move the mountain~#8 Event Horizon の流れに注目したい。物語を繋ぎわたすかのような#7から、新たな物語の再加速を歌い上げるかのような#8への展開はその道の先、続いていく世界への期待を抑えることが出来ない。そして大曲、Elysiumへと繋がる展開はアルバム全体をしっかり見通した曲順であり、突き抜けた期待感を完璧に受け止め、完成された理想郷へと聴くものを連れていってくれる。理想郷、その内実が決してその名の示すような単純で完璧なものではないのであろうことは容易に想像がつくのだが、それがまた同曲を興味深いものにさせているのだ。

 

ボーナストラックについてはあまり細かく言及しないが、Black Diamondについては、やはり本家、コティペルトが歌う唯一無二の本物だなあ、というのが率直な感想である。何処かで日本の某メジャー流通メタルバンドのカヴァーを意図せず聴いたが、むごい改悪の加えられた唾棄すべき仕上がりであった。改変やアレンジの全てを拒否するものではないが、あれほど酷いものになるのはただただ驚きであり、特にヴォーカリストの「自分が上手いと勘違いしている」かのような歌唱は聴くに値せぬものだった。この曲を聴くたびに思い出すのだから、何とも迷惑な話である。

完璧に統制された楽曲世界の中、まとめあげられた、必要な音だけが載る本家の完成度に余分なアレンジをさしはさむ余地などないことは言及するまでもないことであり、それはこのアルバムに収録されているライブテイクにおいても明確に表現されている。

 

 

 

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