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次は司法書士とるぞ! おかげさまで行政書士試験は突破できました2020!交通安全アドバイザーのhigashiです。

自賠責保険1.入・通院部分と後遺障害・死亡部分に分離

※当ブログに記載の自賠責保険等話題については当方交通事故処理の中で実例として生じた内容を一般化した上でお伝えしているものです。個別のケースで自賠責調査事務所の見解が異なるなど、違った結果が生じる場合があります。あらかじめご了承いただいた上で参考としてお読みいただければ幸いです。なお、当ブログの記事に基づく保険回収などで損害が生じた場合、当ブログではいかなる責任もおいかねます。

 

お疲れ様です。

さて、自賠責保険のいよいよ各論部分ですが、ここからは本当に突っ込んだ話になっていきますから、読んでもよくわからん!ということもあるかもしれません。出来るだけ丁寧に進めていくつもりですが、もし不明点などありましたらお気軽にお寄せください。

 

 早速ですが以下のようなケースを想定してみましょう。

 

 1月1日、A車がB車に追突し、B車運転者が負傷した。

 このケースで自賠責保険を適用していく場合、加害者請求であればA車がB車運転者の治療費などを支払い、その支払った分を自賠責保険に請求をしていくことになります。ここでの上限は120万円、というのは前の記事でも触れた通りですね。一つ注意をしていかなければいけない点は、この120万円には慰謝料も含まれる、ということです。また別の記事でもう少し詳細にご説明いたしますが、自賠責保険の慰謝料は、治療実日数に2を乗じた数値または治療の総日数のどちらか小さい方に4300円を乗じたものが支払われます。そして、これは1回病院に行くごとに発生しますから、例えば上の例でいくと1月に4回通院し、AがBの治療費4回分を支払い自賠責保険請求をした場合、実日数の二倍は8、総日数は31日なので、自賠責保険上の慰謝料は¥34,400が発生しています。治療費が4回で10万円発生している場合、すでに一ヶ月で¥134,400が自賠責保険上の総損害として発生しているわけです。今回は交通費などの周辺損害はないものとしましょう。

 では、この事故の治療が全部で6ヶ月かかった場合を考えます。各月4回の通院であったとすると、実日数の2倍の方だけを見れば問題ありませんから総日数は割愛します。

実日数24日 x 2 =48 

48x4300=¥206,400

各月に治療費が10万円ずつ発生している場合、これに60万円が加算され、¥806,400が総損害となります。

 

 同様の日数で、途中4ヶ月に休業損害が10万円ずつ発生し、賠償しているとしたらどうでしょうか。上の金額に40万円を加算すると¥1,206,400となり、120万円を超過してしまいました。この場合、示談の段階で慰謝料を減額して支払わない以上は自賠責保険からのみでは加害者請求で回収しきれない、ということになります。このような事態にならないようにするために保険会社は自賠責保険を慰謝料等まで含めて超過しないタイミングで治療費の打ち切りを打診したり、早期に示談をしようとしてくるわけですね。

 ここからいよいよ後遺障害との分離の話になりますが、後遺障害分の慰謝料等はこの120万円の枠の外側、等級別に別途設定された金額が支払われます。引き続き上の例を用いていくと、この六ヶ月目で症状固定として示談をしていく場合、後遺障害の認定を取ることによって、被害者は傷害分慰謝料にくわえて後遺障害分慰謝料+逸失利益(14級9号で最高75万円)を受けることができます。これは、場合によっては事故被害者に有利な条件と言えるでしょう。治療をさらに続けていくことによって残存する症状がなくなればそれはそれで良いことですが、当然に後遺障害は認定されず、その分の慰謝料を受け取ることはできなくなります。早期に症状固定とし後遺障害を含んで示談をすることは相手方にも金銭的面においてはメリットになりますから、それならば、と早期の示談に応じてくれる場合もあります。そうなれば、加害者としても早期に事故解決をしていくことができるわけで、保険の仕組みによってWINWINが構成できるわけです。後遺障害がそもそも認定されない場合もありますから一概には言えませんが、加害者側の誠意として、こういった選択肢は提示してあげるべきでしょう。なお、こういった自賠責保険ベースでの後遺障害の話題になると弁護士を立てて増額、といった話が入ってきますが、それが必ずしも大正解とはならないケースもあります。これについてはまた後日別の記事で解説いたします。

 

 最後に少し裏技めいたお話をしましょう。

 総論部分で触れましたが、加害者請求と被害者請求では加害者請求が優先されます。そして、任意保険会社ではない、例えば事業者が独自で事故処理を行なっていく場合、後遺障害の認定は原則被害者請求になります。(任意保険会社は先行して事前認定をし慰謝料を算定することができます)そこで、こういった事前認定をできない状態であるとして、加害者側から、被害者には後遺障害を被害者請求してもらう段取りを整え、並行してすでに入院通院分で確定している分を慰謝料まで含めて支払ってしまい加害者請求に回してしまう。この場合、どうなると思いますか?

 

 上で入・通院分と後遺障害分は分離されている、と記載した点と矛盾しているように感じられるかもしれませんが、自賠責保険の場合、入・通院分として認定可能な上限120万円を超過して賠償を行なっている分は後遺障害の既払い(内払い)として認定してくれます。よって、この例でいくと6400円は後遺障害分の慰謝料として先払いをしたものだよ、として加害者請求分で戻してくれるわけです。被害者請求された後遺障害分は6400円を差し引いたものが支払われます。ただし、これはもちろん、後遺障害がすでに自賠責保険として認定されている、または後遺障害分の被害者請求段階で加害者請求が到達していることが前提です。競合する加害者請求があるかどうかを自賠責保険から問い合わせてくれる場合もあるようですが、当方で持つ先例としては特に問い合わせはありませんでした。(特殊な事例かつ規模の大きな事故で当面の生活費として120万円を超えて先行して内払しているようなケースで、自賠責保険には既に振込の控えなどが回った状態で保留扱いになっていたもの)

後遺障害分の支払いが既になされてしまっている場合どうしようもありませんが、調査中の段階で加害者請求を入れていけば十分に間に合うタイミングですから、示談交渉の中で、ひとまず確定している分は先に支払います、という話にしてしまえば、こういった手段をとっていくことも出来る、というわけです。

 

 後半の裏技的な回収方法は当方でも先例が少ないため、必ず成功するとは言い切れません。予想もつかないような理由で失敗することもありますから、その点は悪しからずご了承ください。また、特殊な例を体験した情報などお持ちの方はぜひお寄せください! 

以上です。

お疲れ様でした!

 

 

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